- グローバルな影響:半導体製造装置の売上が過去最高水準に達する中、標準化された通信の重要性はますます高まっている。
- 標準規格:SECS/GEM(SEMI E5/E30)は、ファブ装置とホストシステム(MES/EAP)を接続する共通言語として機能する。
- 主要構成要素:SECS はメッセージ伝送(データの流れ)を担い、GEM は装置の振る舞い(状態モデル、リモート制御、アラーム管理)を定義する。
- 運用上の利点:導入により完全自動化が可能となり、リアルタイムのデータ収集とレシピ管理によって歩留まりが向上する。
- 実装:複雑ではあるが、最新のソフトウェアソリューションにより統合が簡素化され、装置ごとにカスタムコードを書くことなくスケール可能となる。
はじめに
現代の半導体ファブに足を踏み入れると、ロボットアームが舞い、FOUP が天井の搬送レールを高速で移動し、クリーンルームの照明が規則正しく点滅している光景が広がるでしょう。しかし、このオーケストラを指揮している“真の指揮者”は目に見えません。
SEMI(2025年)によると、世界の半導体製造装置市場は AI や高性能コンピューティング向けチップ需要の急増により、2025年に 1,330億ドルに達すると予測されています。しかし、工場ホストと通信するための標準化された仕組みがなければ、これらの高価な装置は事実上ただの箱に過ぎません。
ここで重要となるのが SECS/GEM です。これは単なるプロトコルではなく、ファブの神経系そのものです。SECS/GEM がなければ、数十億ドル規模の工場は孤立した装置の集合体に過ぎません。SECS/GEM があって初めて、人の介在なしにナノメートルレベルのトランジスタを生産できる、統合されたインテリジェント製造ラインが実現します。

なぜファブでは接続性が重要なのか
初期の半導体製造では、オペレーターが手動でレシピをロードし、「スタート」ボタンを押していました。しかし、その時代はすでに過去のものです。現代のファブは“ライトアウト”運転が基本であり、自動化が支配しています。
課題は、ファブが技術的な「バベルの塔」であることです。カリフォルニア製のエッチャー、オランダ製の露光装置、日本製の成膜装置――それぞれが独自の内部言語を話します。
この問題を解決するために採用されたのが SECS/GEM 標準です。このプロトコルにより、MES や EAP などのホストシステムは、ベンダーを問わず任意の装置に同じ方法でコマンドを送信し、予測可能な応答を得ることができます。結果として、バラバラな独自ソフトウェアの集合体が、統一された生産ラインへと変わります。
SECS/GEM とは何か
SECS/GEM は、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)が策定した一連の標準規格です。装置とホストシステム間の通信方法を定義します。
この略語は、2つの異なる役割に分けて考えると理解しやすくなります。
「SECS」― メッセンジャー
SECS は Semiconductor Equipment Communication Standard の略です。SECS は配送トラックのような存在で、「中身」には関心を持たず、データを安全に A 地点から B 地点へ運ぶことに専念します。
- SEMI E5(SECS-II):メッセージの「文法」を定義。状態要求、レシピ送信、エラー報告などの標準メッセージを規定。
- SEMI E37(HSMS):最新の通信層。SECS メッセージを TCP/IP(Ethernet)上で送信。
- SEMI E4(SECS-I):RS-232 シリアル通信を使用する旧規格。現在ではほぼ廃止。
「GEM」― 行動規範
GEM(Generic Equipment Model / SEMI E30)は、装置の振る舞いを定義します。
SECS が配送トラックなら、GEM は運転マニュアルです。
GEM は、装置が特定の状況でどのように振る舞うべきかを明確に規定します。これにより、異なる装置であっても「START」コマンドの意味が完全に一致します。
内部での動作原理
SECS/GEM は Streams & Functions(SxFy) という構造化されたメッセージ形式を使用します。
- Stream(S):大分類(例:S1=装置状態、S6=データ収集)
- Function(F):具体的な操作
簡単な通信例:
- ホスト → 装置(S1F1):「オンラインか?」
- 装置 → ホスト(S1F2):「オンラインです」
- ホスト → 装置(S2F41):「START」
- 装置 → ホスト(S2F42):「コマンド受信」
この厳密な構造により、曖昧さのない自動化が実現します。
GEM 準拠インターフェースの主な機能
リモート制御
装置の開始・停止、レシピ選択、搬送制御をすべて遠隔で実行可能。
アラーム管理
障害発生時に標準形式で即座にホストへ通知。
データ収集
イベントベース・時間ベースのデータ収集により、歩留まり解析や APC を実現。
現代ファブにおける SECS/GEM 導入
SECS/GEM をゼロから実装するのは現実的ではありません。多くの OEM は SDK を使用し、装置の本質的な制御に集中します。
主な課題:
- レガシー装置の対応
- GEM 準拠性の検証
- GEM300(300mm 自動化)への対応
まとめ
SECS/GEM は、半導体ファブにおける知能化の設計図です。
次世代装置を開発する OEM にとっても、効率を最大化したいファブ運営者にとっても、SECS/GEM の理解は「選択肢」ではなく「必須条件」です。
よくある質問
SECS は通信形式、GEM は装置の振る舞いを定義します。
はい。HSMS により TCP/IP 上で動作します。
可能です。GEM 有効化ソフトやゲートウェイを使用します。
リアルタイムデータ収集により APC が可能となり、不良を事前に防止できます。

